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地元にあるお店やブランドの人気が広がって、全国的に知られるような存在になると、同じ地域に住む私たちも、なんだか少し誇らしく思える瞬間があります。
自分たちが昔から知っていたり、素敵だな、と感じていたものであれば、それはなおさら。
そして、そんな素敵なお店やブランドの多くが独自の世界観を持っています。その世界観に共感してファンになる気持ちは、自然と人から人へと伝わっていきます。
今回ご紹介するのは、東京をはじめ全国にファンが広がっている、浜松の家具ブランド『hiro furniture』さん。現在は、オーダー家具のほか、住宅建築、店舗デザイン、ガーデン設計など、さまざまな事業を展開されています。
訪れたのは、中区相生町のショールーム。お店の前に立つだけで、hiro furnitureさんがつくり出す独特な空気感をいっぱいに感じられます。浜松を中心に、人気となっているカフェや美容院なども、これまでに数多く手がけてきました。
ショールームに入ると、木や鉄、モルタルなどを使ったシンプルで洗練された空間に、たくさんの家具が並んでいます。
お話を伺ったのはhiro furnitureの創業者であり、代表取締役のヒロさん。「写真に映るのはすごく苦手で…(笑)」と恥ずかしがりながらも、当時のことを丁寧にお話してくれました。
hiro furnitureをはじめたのは、ヒロさんが33歳のとき。
「一人暮らししていた自分の部屋がかっこよくなくて…。それで、当時はじめていたリフォーム業で出る端材を使って、自分の部屋の家具づくりをはじめたんです。」
自分の部屋からはじまった家具づくり。作り出すとその魅力にどっぷりとはまり、独学で家具づくりの事業へとシフトしていったそう。
hiro furnitureさんが作る家具は、オーク材の無垢の木と無骨な鉄とを融合させ、シンプルでありながら存在感のある、オリジナルのオーダー家具。木も鉄も、無垢ならではの質感や素材感を感じることができます。
その世界観で人気が広がっていった『hiro furniture』のブランドは次第に大きくなっていき、県外からの問い合わせも多くなっていきました。平成28年12月に東京ショールームを開店し、現在家具のオーダーの7割は関東方面からの依頼だといいます。
また現在は、家具づくりにとどまらず、ショップのプロデュースや住宅建築、外構・庭づくりなど、手がけているものは多岐にわたっています。
次々とOPENするお店や新築の住宅は、hiro furnitureさんらしさが詰まった素敵なものばかり。事業の展開は、どんな風に広がっていったのでしょう?
「基本は、家具なんです。例えば写真におさめるとき、家具をかっこよく見せたいと思ったら、周りの環境がかっこよくないと決まらないんです。だから、家具を置く場所としての空間づくりを自分でするようになって、そういう依頼も自然といただくようになってきました。」
だから、hiro furnitureが作るものには必ず家具がある。
無骨なようでいて、素材感を感じられるあたたかみや、エイジングのあしらい、整ったバランスの美しさなど、ひとつひとつの家具から大きな力のようなものを感じます。
「家具職人は、昔から未経験者を積極的に採用しているんです。好奇心や探究心があれば自然に技術は身についていくし、自分で考えて良いものを作れるようになります。僕自身がなんでも独学で始めてきたから。」
個人からはじまったhiroは、2017年に株式会社hiro furnitureとして法人化しました。現在働くスタッフは、設計を行う建築士が2名、施工管理技士が2名、家具職人が1名と事務スタッフのみなさんです。
事務所はヒロさんを中心に和気あいあいとした雰囲気が印象的で、女性も多い。スタッフの中には、じつは元々お客さまだった方も多いそうです。
「うちは本当にお客さまに恵まれていて。hiro furnitureの作るものが好きな人が自然に集まって、お客さまになってくれています。だから、そんな中で入社してくれたスタッフは、うちのことをよくわかってくれているし、何よりものづくりを一番楽しんでくれています。」
家具づくりからスタートして、自然と仲間が集まり、いろいろなことを手がけるようになったhiro furnitureさん。今、新たに動き出した規格住宅『f-case』も、そんな風に自然に生まれてきた事業の一つ。
「『f-case』の特徴は、1階部分があらかじめ決まった間取りになっていて、2階が暮らしに合わせてカスタマイズできるフリースペースになっています。使うものはすべてオーダー家具だから他にはない特別な住まいがデザインできますし、価格を抑えることができるのも大きなメリットです。」
住宅や店舗は、シンプルなものであればあるほど、どうしても似通ってくる。決定的な違いを生み出すのは、hiro furnitureさんの家具。だからこそ、独自の世界観を感じられるのだと思う。
そんな設計部門を担うのは、設計士の資格を持つ杉山さんと東さんです。お二人のお仕事は、住宅や店舗のデザイン、インテリアのコーディネートなど全般です。
「私たち、環境が似ているんですよ〜」と、世代の近いお二人は楽しそうにお話してくれます。
はじめにお話を伺った杉山さんは、入社3年目で沼津市の出身。結婚して浜松に移り住まれました。前職は、大手ハウスメーカーで働かれていたそうです。
「前の会社では、とにかく朝から夜中まで四六時中仕事って感じで(笑)。休日でも電話が入ることもありましたし。とはいえ、忙しいこと自体は嫌いじゃなかったので、若い頃はそれでもよかったのですが、結婚して家庭生活が成立しなくなってきてしまったこともあって。」
そんな中、たまたまSNSで求人募集を見たのが、入社のきっかけだそうです。入社後は、妊娠・出産を経て1年ほど前に産休から復帰。今は子育てをしながら働いています。
「働く環境はほんとガラっと変わりました。夕方には保育園に子どもを迎えに行くので遅くまで働くこともないですし、今は自分たちの生活を大切にしながら、働けているっていう感覚かな。それに、時間も限られている分、仕事の密度も変わったと思います。」
そんな杉山さんは、面接の時に初めてヒロさんに会った時のことがすごく印象的だそう。
「面接って前職の頃の感覚しかなくて、きっちりスーツで行ったんですよね。そうしたら、ジーパンと帽子のラフなヒロさんが出てきて(笑)。そこでものづくりの想いを私に熱く語ってくれて、今でもあの日のことはよく覚えています。」
そして、その時に話してくれた想いは、hiro furnitureでの仕事にすべて通じているといいます。ヒロさんのブレない軸としなやかさは、いつでも変わらないそう。
「仕事の一つ一つにこんなに濃密に取組むことって、今までなかったんです。前の会社では、一部分に限定された仕事をたくさん抱えていました。一方、ここでは最初から最後まで自分自身がこなします。例えば土地探しのお手伝いから、現場で職人さんとのすり合わせ、材料の手配などまで。」
それだけに、担当するお客さまも少数で、一件一件丁寧に取り組めることが、自分にとってすごくいいという杉山さん。
「形ができていく過程で、お客さまも気持ちがどんどん高揚してくのが分かるんです。関わる人たちと喜びを共有しながら働けるって、本当に恵まれています。」
自分の描いたものが少しずつ形になっていって、お客さまの笑顔を見られることが、杉山さんにとっての一番のやりがいだそう。
一方、東さんがhiro furnitureで働き出したのは、杉山さんが産休に入るタイミング。同じく設計とインテリアのコーディネーターとして入社しました。
大学で建築を学び、東京の設計事務所で働いていた東さんは、当時も店舗の設計に関わることが多かったそうです。そんな東さんも、結婚を期に浜松に移り住みました。
「この地域で暮らしはじめて、好きになって通うようになったカフェやお店が、じつはどれもhiro furnitureが手がけたものだってことを、ある日知ったんです。それで、このショールームにも遊びに来るようになって。」
そうして、ご自身が自宅を建てる際には、家具や建具などもお願いしたそうです。
「当時、お客の一人としてヒロさんと話していた時に、なんて面白い人なんだろうって思っていました。ふらっと訪れたお客さまとの話にも、ゆっくり時間をとってくれるし。」
次第に、ここで働けたらという気持ちを持つようになって、自分からそんな希望を伝えたそう。ちょうど杉山さんの産休のタイミングもあって、憧れだったhiro furnitureさんでの仕事がはじまりました。
「ただ、二人の子どもがいて子育てしながら働けるのかなっていうことは不安もありました。大きな会社ではないし、忙しいことは分かっていたので、それなりの覚悟はしていました。でもそんな相談をすると、杉山さんも同じような環境で働いてくれているから、大丈夫だよって言ってくれて。」
設計の仕事は大変な職場が多いから、こういうスタイルで働くことができるんだということは、入社してから驚いたことだったそうです。
実際に、働いてみてどうですか?
「私は店舗のデザインを担当する事が多いのですが、やはり当社に依頼をされるお客さまは、豊かな感性を持った方が多いです。美容師さんでも、料理屋さんでも、その道を極めようという人たちですし。」
そんなお客さまから、さまざまな要望や相談を受けながら進めていきます。時には、こんな方でも迷うことがあるんだ、と驚くこともあるそう。
「私では解決できないような難しいことでも、ヒロさんが必ず答えを出してくれます。そんな現場を間近でみられるのもすごい。いろいろと乗り越えながらお店が完成して、『hiro furnitureさんに頼んで本当によかった』って言葉をいただける瞬間は、ほんとに泣きそうになるんです。」
お客さま一人一人に、真剣に向き合うからこそ、そんな言葉をもらったときの感動もまたひとしおなのだと思う。
こうした店舗デザインは、依頼の多い仕事の一つだというヒロさん。自分自身も一人で起業してきたから、そんなお客さまの気持ちはよく分かるといいます。
「店舗デザインを依頼されるのは、開業する方がほとんどです。商売を始めるのは、すごく勇気のいること。リスクを考えたら不安になりますよね。それでも決心できるのは、好きだから。好きなことなら勉強もするし、吸収もできる。誰に強制されなくても、自然と一生懸命になれるんです。」
ヒロさんは、開業のお手伝いをするたびに、お客さまの姿を見ていて自分自身の初心を思い出すそう。大切なのは、初心。
「やろう!と決心した気持ちと勇気をずっと忘れなければ、商売はそれだけで成功だと思うんです。だから、僕たちも精一杯要望を聞いて、応えてあげたいと思っています。」
そして、そんな想いに応えられるのは、ヒロさんたち自身も楽しんでいるからこそ、なのだと思う。
「スタッフはみんな作ることだったり、打ち合わせることだったりを楽しんでくれていて、完成が待ち遠しいっていう感覚を持っていると思います。最終的な仕上げやディスプレイは僕が手がける部分も多いけど、自分たちでそれぞれに目標を持ってくれれば、その過程で僕が指示をすることもそんなにありませんし。」
仕事はスタッフそれぞれに任せているから、責任を持って仕事を果たしてもらえればいいというのがhiro furnitureの考え方。
「良いものを作るっていう気持ちが一番大切なんです。作業に追われると、必ず雑なものになってしまうし、つくり手に余裕がないと、いいものは生まれません。もちろん効率よく作業してもらうことは必要だけど、大切なことは『hiro furnitureに頼んで良かった』と思ってもらえるものを作ることだから。」
とはいえ、経営者としては、できるだけ早く作業して欲しいと思うのがきっと自然な気持ち。その加減は難しくはないのですか?
「例えば、店舗デザインの仕事であれば、僕たちが仕事を受ける時点でオーナーさんにはもう家賃が発生しています。仮にオープンが遅れれば、より大きな負担をかけてしまう。そんなお客さまのことを考えれば、自然と仕事の密度は高くなります。そういう部分では厳しいことを伝えることもありますが、みんな同じ目線で仕事に取り組んでくれているし、信頼している部分なんです。」
もう一人、最後にお話を聞いたのは、hiro furnitureさんの中でも要を担う、家具職人の斉藤さん。今回、主に求人をするのは、斉藤さんとともに家具づくりを担ってくれる職人さんです。
斉藤さんは働きだしてから約5年。普段は、外注でお願いしている職人さんと一緒に作業をしています。
以前は、自動車部品の製造会社で生産ラインの保全をする部署にいたそう。転職したきっかけはどんなところにあったのですか?
「前職では、社内での機械保全を担当していたのですが、不具合が出てもわからないときには結局、機械メーカーの方を呼んで対応してもらっていました。すると、来てくれたメーカーの方はなんでも分かって解決してくれる。単純なんですが、そういう姿を見ていて、自分もそういう一から十までものづくりに関わるような仕事がしたいと思ったんです。」
メーカーの方は、自分たちが作っているものだからすべてのことが分かる。それに比べて、自分自身の中途半端な立場に違和感を感じるようになったそうです。
「そのときに、自分の頭の中にあったのが家具なんです。まったくの未経験でしたが、入ってからいろいろと学びながらやってきました。」
実際にオーダーがあると、お客さまのご相談に乗るのは、専務の松下さん。お客さまからご注文を受けたあと、どうやって要望を家具として形にするか、松下さんと斉藤さんで一つ一つ一緒に検討するそうです。
難しいオーダーも、経験とアイデアでほとんどのものを形にしてくれるので、とても心強いという松下さん。
「5年働いても、まだまだ知りたいことがたくさんあります。木のことももっともっと知りたいし、今は外注さんにお願いしている鉄の造作も、いずれは自分でやってみたいと思っています。そういうことは、ここで働きだしてから余計思うようになりました。」
hiro furnitureさんにとって家具は一番中心にあるもので、家づくりにも、店舗設計にも、必ず家具がついてくる。
斉藤さんは、それを一手に担っているから、きっと感じているプレッシャーも大きいのでは?と推察するこちらの気持ちとは裏腹に、話す口調はとても落ち着いています。
「たくさんオーダーをいただいているのでもちろん仕事は多いのですが、一つ一つに想いを込めて作っています。たくさんあるから急いで、ということはしないように。自分自身もマイペースな性格だけど、こうしたことは会社自体が大切にしていることで、社内にも浸透していると思います。」
また、好奇心が強いのも斉藤さんならではだそう。松下さんの話では、これってどうやってできているんだろう?と、造りを確認したり調べはじめたりする姿をよく見るそうです。
「自分で研究しながら、ものづくりができるのは醍醐味だと思います。強度のこととか、機能のこととか、自分で考えながら作れるのは楽しいですね。」
これから家具職人を目指す方にとって、大切なことってどんなことだと思いますか?
「使うお客さまへの配慮っていうか、心遣いがあれば、どんな人でもできると思います。僕も未経験者だったし、特別難しい作業をしているわけではないから。ここに角度がついていると手に触れた時に痛いかな、とか。小さいことだけど、そんなことの積み重ねが大切だと思います。」
自分自身がそうだったように、これから新しく入ってくれる方も、その人なりのペースでいろいろと学びながら上達していけばいいと思う。
そう昔を振り返りながら話してくれる斉藤さんからは、5年で積み重ねた経験と自信を感じとることができました。
働くスタッフのためのこうした環境づくりは、一番配慮していることだとヒロさんはいいます。
「必要以上に会社を大きくする必要はないと思っているんです。スタッフもお客さまも、好きな人が集まってくれるのが一番。斉藤くんのように未経験でも、まっさらな感覚だからこそ吸収できることも多いと思う。」
その根っこにあるのは、やはり『楽しんで働く』ということなんだと思う。
「スタッフだけでなくて、施工してくれる周りの業者さんなんかも、楽しんでくれているんです。あの物件、はやくやりたいね〜なんて。楽しさって伝染するんです。お客さまももちろんですし。つくり手が楽しんでいると、みんなに伝染していくんです。」
これから先も、きっとたくさんの人たちの暮らしを形作っていくhiro furnitureさん。向かう先はどんな方向でしょう?
「今までも、この先も、どこまでもつくるものにこだわっていきたいです。僕たちは、今もとても恵まれている環境。この先いろいろな変化もあると思うけど、こうした今を保っていければ。スタッフみんなが楽しいと思える仕事をしながら、それぞれの家族の暮らしを守っていければ、それが一番幸せなことだと思うから。」
他には真似できないような圧倒的な世界観も、それをつくり出すのはチーム。いいチームだから、いいものがつくれる。きっとどんな仕事でも共通することなんだと思います。
センスもきっと必要な仕事だと思います。でも、こんな素敵なものづくりに関わることができるのは、他ではできない体験だと思います。
興味を持たれた方は、ぜひ一度ショールームを訪れてみてください。かっこいい家具とともに、hiro furnitureさんの『楽しい』をきっと感じていただけると思います。
■株式会社hiro furnitureのホームページはこちら
「hiro furniture」→ http://www.1-hiro.com