浜松市西区入野町にある龍雲寺さんは、約700年前に、時の皇太子であった木寺宮康仁親王によって開かれたお寺です。
歴史は古く、木寺宮家は、三方ヶ原の戦いで武田方についたため、家康の軍勢に攻められ、本尊阿弥陀如来像と山門を除く、お寺の建物すべてを失ったそうです。
復興もままならない時代がしばらく続き、波乱の歴史を重ねましたが、元禄時代に復興し、現在に至ります。
佐鳴湖畔に広がる龍雲寺さんの境内では、小川にホタルが飛び、サワガニが群生するなど、自然が多く残り、山頂からは佐鳴湖や南アルプスが一望できます。
自然豊かでありながら、浜松駅から車で15分と、街中からのアクセスが良いので遠方から来られる方も安心です。
山門をくぐると平成の小堀遠州と称される、北山安夫氏による庭園が広がり、本堂から涅槃堂(ねはんどう)へ進む途中には、山頂から落ちる滝や、池の錦鯉を鑑賞でき、訪れる人の目を楽しませてくれます。
そんな龍雲寺さんで、11月21日から、書家・金澤翔子さんの企画展「金澤翔子書展」が開催され、新作を含む40作品が展示されます。
書家・金澤翔子さんはダウン症という障害を持ちながら、5歳から書を始め、20歳のときには銀座書廊で初個展を開催。
その後、京都建仁寺などで毎年個展を開催し、福島に「金澤翔子美術館」を開設されました。
その他にも、NHK大河ドラマ「平清盛」のタイトル題字を手がけるなど、さまざまな方面でご活躍の場を広げています。
そんな金澤さんと親交の深い龍雲寺さんに、金澤さんの代表作ともいえる「世界一大きい般若心経」が奉納されたのは1年前。
涅槃堂新築に合わせ、「世界一大きい般若心経」のほか、襖に書かれた作品などが常設展示されるようになりました。
「もともと愛媛県美術館で展示された作品を、当山に奉納していただくことになり、世界一大きいとは聞いていたものの、実際に送られてきた作品を見た時は、予想外の大きさに正直驚きましたね。」と笑うのは、ご住職の木宮さん。
「東京や他の地方から友人が訪れた時、浜松で紹介するものってどうしても限られてくるんですよね。この作品を浜松を訪れてくださる方に紹介できるもののひとつになればいいなと思っています。
当山は、観光で訪れるようなお寺ではなく、拝観料もおとりしておりませんが、どなたでも来ていただいて、のんびりと過ごし、癒されて帰ってほしいと考えております。
また、多くのご縁が広がり、その方の人生を豊かにする場所になれればと。それがお寺の役割でもあるんです。」とご住職。
縦4メートル×横16メートルの「世界一大きい般若心経」は、パンフレットやホームページで見るより、実際に見たほうが大きく感じ、一文字一文字、力強さを感じます。
撮影していると、立っている人と作品を比べると大きさが伝わりやすいですよ、とご住職が作品の前にきてくれました。
たしかに、ご住職の何倍も大きいので、画面からも作品の大きさが伝わるかと思います。
作品を下から眺めると、まるで文字が降ってくるような不思議な感覚に。遠目で眺めたり、近くでじっくり鑑賞したりと、さまざまな見方で作品を楽しめます。
大人も圧倒されるこちらの作品は、遠足で訪れた近所の小学生の子たちも見た瞬間「すごい〜!」と大盛り上がりしてくれたこともあったそうです。
予定時間をオーバーしてまで鑑賞してくれ、当初、小学生の子たちが書道の作品を見て喜ぶかな、と不安に思っていたご住職の心配を吹き飛ばしてくれたそうです。
昨年から「金澤翔子書展」を開催していますが、今年から10年かけて、金澤さんが今までとはちがうスタイルの“チャレンジ”した作品を、発表できればと、ご住職は言います。
また、常設展の作品は涅槃堂にだけ展示されていますが、「金澤翔子書展」は、お寺の建物内に新作を含め、40作品を展示されるそうです。
庭の自然を楽しみつつ、お寺の中を進みながら、金澤さんの作品を楽しめそうですね。
癒しと安らぎを与えてくれ、チャレンジすることの大切さを教えてくれる金澤さんの作品。芸術の秋は、龍雲寺さんの「金澤翔子書展」に出かけてみてはいかがでしょうか。
龍雲寺特別企画「金澤翔子書展」
【開催期間】
2018年11月21日(水)~12月3日(月)
【時間】
9:30~17:00 ※最終入場16:30
【費用】
入場無料(ご満足いただけたらお賽銭をお入れください)
【会場】
龍雲寺 浜松市西区入野町4702-14
【お問い合わせ】
[TEL]053-447-1231
【アクセス】