遠州ブランドスピリッツ

STORY

日本文化が宿る、建具のある空間

2014.12.25
■インタビュー/大野建具有限会社 建具職人 大野 浩二
【第3話】

建具の「楽しみ」と「遊び」を残すために

無限の組み合わせから、その部屋だけの装いを

T障子などの木組みのパターンは、何種類くらいあるのでしょうか?
大野無数にあります。自分の頭の中に、組み方のストックがあり、部屋を見て、部屋が横長なら縦長のパターンにしよう、とか、お客さまの好みやこだわりも聞いて、決めていきます。部屋は、建具によって雰囲気が全く変わるのです。
Tなるほど。
大野ただ、多くのお客さまは、そのことをご存知ありません。なぜなら、家を建てるときに、たいていは建具をカタログで選んでいるからです。A、B、Cとあって、「どれにしますか?」という感じです。けれども、本当は、3種類だけではなく、山ほどあるのです。

お客さまが当店の建具を見て、「こんな建具があると知っていたら、選んでいたのに。」ということが、よくあります。先日も、当店の障子を気に入ってくれて、まだ家を新築して何年も経っていないにも関わらず、「玄関を入って見えるところ2本分だけでも、この障子に変えたい」ということで、買ってくださいました。
Tそれは嬉しいことですね。
大野はい、本当に。

建具づくりを支える、職人たち

Tふすまのフチを塗るのも、建具屋さんの仕事なのでしょうか?
大野いえ、塗りは「塗師屋(ぬしや)」という専門の職人さんにやってもらいます。他に、ふすま紙の職人さん、和紙の職人さん、刃物などを研いでくれる研磨屋さん、さらに言えば、機械の調整をしてくれる人も必要です。建具1本作るのにも、建具屋だけでは作れないのです。
Tさまざまな技術が必要なのですね。
大野最近はそうした職人さんたちも、皆さん高齢化していて、どんどん減っているというのが現状です。当店が頼んでいる塗師屋さんも一番若い方で78歳ですし、ふすま紙では、遠州地域でもわずかな軒数しか見つからないでしょう。

遊び心で、自由に楽しんでほしい

大野建具屋自体も減っていますし、「たてぐ」と読める人も少なくなっています。先日、あるイベントでアンケートを採ったのですが、「ドアなど動きが悪い所があると、どこに頼みますか?」という質問には、「サッシ屋さん」や「工務店」という答えで、「建具屋」という答えはありませんでした。さらに「建具屋の仕事は何ですか?」と聞くと「分からない」と言う人が大半です。
Tそれはショックですね。
大野はい。そんなこともあり、やはり、まずは建具の良さを知ってもらいたいと、より強く思うようになりました。障子などは少し破れただけで、すべて張り替えなければいけない、と考えている方が多いですが、そんなことはないのです。破れた部分だけカットして、色和紙を貼ってもいいし、昔からあるように、和紙を桜の形に切って貼っても楽しい。もっと自由に遊んでいいものなのです。
T確かに、それなら気軽にできそうです。
大野そうやって、いろいろ遊んだ後に、「じゃあ、また全部張り直してください」と、建具屋に頼んでくれればいいのです。そういった、建具ならではの「遊び」や「楽しみ」があることを、より多くの人に伝えていきたいです。

2014年12月



■PROFILE

大野建具有限会社

2代目の父と3代目の息子の二人三脚で営む建具店。【グッドデザインしずおか2014 文化賞】を受賞した「夏戸」は、風通しの良さはもちろん、繊細なデザインが見た目にも涼しげです。遠州地域とその近隣地域で、障子やふすまの修理・張り替えを出張サービスで行っています。

■ホームページ:http://oonotategu.hp.gogo.jp/

go to pagetop