遠州ブランドスピリッツ

STORY

日本文化が宿る、建具のある空間

2014.12.18
■インタビュー/大野建具有限会社 建具職人 大野 浩二

浜松市西区舞阪町で3代にわたり建具店を営む【大野建具】。やぶれたり、すべりの悪くなったりした障子やふすまの張り替え・修理はもちろん、オリジナルの建具製作も得意とする。日本建築の間仕切りである「建具」には、長年使いつづけるための工夫だけでなく、住空間を楽しむ、自由な遊び心にもあふれていた。

【第1話】

想像力で描き、手仕事でつくる

直して、張り替えて、使い続ける

T大野建具さんの創業は、いつ頃でしょうか?
大野いま3代目になりますが、祖父が昭和初期に建具屋として創業したと聞いています。創業からしばらくの間は、実家の裏の小屋でやっていたそうです。そのうち、手狭になってきたので、今の場所に移ってきました。
Tそうなのですね。建具の中でも分野がありそうですが、現在は、どういった仕事を主にされているのでしょうか?
大野新築住宅の建具製作はもちろんですが、個人のお客さまから依頼される、建具の修理や、ふすま・障子などの張り替えも多いです。その他に、当店オリジナルの建具を気に入ってくれたお客さまが、新たに建具を注文してくださるということがあります。
T新規の製作のほかに、メンテナンスもやられているのですね。
大野はい。建具というのは、ふすまや障子を張り替えることで、部屋の雰囲気を変えたり、部分的に壊れても修理をしたりして、同じものをずっと使えるように作るのが本来なのです。

服飾の専門職から建具屋へ

T大野さんご自身が、この仕事を始められたのはいつですか?
大野21歳のときからです。それまでは、実は服飾の専門学校に通っていて、服飾のメーカーにも1年勤めていました。
Tそうだったのですね。この仕事を始めた頃、何が一番大変でしたか?
大野建具屋は、単位が「尺寸法」なのですが、それに慣れるのに苦労しました。それだけではなく、付き合いのある大工さんや材木屋さんも、さまざまな単位を使います。例えば、大工さんは、尺寸法、センチ、ミリで言う人がいます。一方で、材木屋などは、石(ごく)を使いますし、平方メートルを使う人もいる、という具合です。
Tそれは混乱しそうです・・。
大野本当に。自分で寸法を出すときにも間違えて、建具が出来上がったら、すごく小さかったこともあります(笑)。それでも、半年もあれば、「ああ、この人はセンチで言っている」という具合に、分かってきましたが。

設計図も完成図も、頭の中で描く

大野それから、建具屋というのは、設計図は使わず、頭の中で計算して、どんどん作っていきます。僕などは、元々が服飾関係で、図面を見ながらやる仕事だったので、そのギャップは激しかったですね。
T図面が何もないのですか?
大野そうです。例えば、ここの幅が何ミリで、この穴が直径何ミリ・深さ何ミリで、というのはありません。それを師匠である父が作業するのを、見て覚えろと言うのです。それでやっていて、間違うと怒られます。それでもう、親子げんかです。
Tそれは大変ですね。
大野はい。作業する順番なども、細かくて。さらに、完成図もありませんので、その部屋に建具が入ったときのイメージも、頭の中で想像しなければなりません。それをお客さまと共有できるかが、この仕事の一番の難しさでもあります。

僕たちがいいと思っても、出来上がりを見て、お客さまは「もうちょっと細くしたほうが良かった」という時もあります。逆にこちらの提案したとおりにして良かった、と言ってもらえたときは、この仕事の醍醐味ですね。

つづく



■PROFILE

大野建具有限会社

2代目の父と3代目の息子の二人三脚で営む建具店。【グッドデザインしずおか2014 文化賞】を受賞した「夏戸」は、風通しの良さはもちろん、繊細なデザインが見た目にも涼しげです。遠州地域とその近隣地域で、障子やふすまの修理・張り替えを出張サービスで行っています。

■ホームページ:http://oonotategu.hp.gogo.jp/

go to pagetop