遠州ブランドスピリッツ

STORY

雑木の緑がつなげる街中

2016.02.04
【第2話】

緑や木陰に、人があつまる

公共スペースに、新しい緑の概念を

街中の緑といえば、街路樹や植え込みが一般的ですが、田中さんは、「それらがある街中を歩いていても、心地よさを感じることが少ないのでは?」と疑問を投げかけます。心地よさをあまり感じないのは、街路樹であれば一本ずつ、均等な間隔で植えられていたり、植え込みであれば人工的なかたちに刈り込まれていたりと、自然の中とは異なる状態だからだと、田中さんは言います。
「自然の山であれば、木はかならず密生していて、1本だけで生えていることはありません。それに、高い木、中くらいの木、低い木、下草と、階層構造になっていて、それぞれが空間をうまく分け合っているのです。それが雑木林の本来のあり方で、私たちが心地よいと感じるのも、そうした、木々の自然な枝ぶりや、風にそよぐ枝葉の音、木漏れ日だと思うのです。Anyでも、自然の雑木林になるべく近い状態の植栽を作ることで、街中に、これまでにない緑の空間を作りたいと思いました。」

ゆたかな土をはぐくむための、水脈づくり

田中さんに施工中の苦労話をうかがったところ、「まず、何と言ってもこのコンクリートばかりの地面を、植物が育つのに適した環境にすることが大変でした。」とのこと。確かに、街中はコンクリートだらけ。表面を剥がしても、地中にもコンクリートの塊や固い石がたくさん埋まっていたりして、それらを取り除くだけでもひと苦労です。

さらに、土質を良くする「土壌改良」の前段階として、ナインスケッチでは「水脈改善」にも力を入れているそうです。Anyでも、その工事に数日を費やしました。「地中に水の流れがないと、空気も滞ります。そのような環境では、土をゆたかにしてくれる微生物や小動物も住めず、やがて、木々も健康に育たなくなります。そうならないためにも、土壌改良だけでなく、きちんと水の通り道をととのえる、水脈改善が大切なのです。」

生命の基本となる「水の流れ」をととのえる。ゆたかで健康な緑を維持するためには、何よりも重要なことなのだそうです。

緑でつくる、新しい街のイメージ

「今回、田中さんにAnyの植栽を担当していただいて、雑木のあり方が、Anyのコンセプトにとてもよく重なる、と気づいたのです。」と高橋さん。「Anyも、スペースや時間、考え方を分け合う、『シェア』をキーワードにしています。ちょうど山の木々が、空いた空間をうまく分け合いながら、枝葉を伸ばすのと同じです。自然の植生のように、いろいろな人たちがAnyにあつまって、それぞれの時間を過ごしてくれれば、と思います。そこから、新しい出会いや繋がりが生まれれば、本当にうれしいですね。」
高橋さんの言葉に、中畑さんもうなずきます。

「その通りですね。今考えてみると、Anyが完成するまでは、プロジェクトに関わった人たちも、雑木の庭のイメージがうまくできていなかったのかもしれない、と思うのです。今回、Anyが完成して、実際に雑木の庭を街中で見て、その良さを改めて実感できたと思います。その意味でも、Anyの果たす役割は、とても大きいと思います。」

Anyができたことで、次はこの場所から、街中全体へ緑をつなげていきたい。田中さんの想いはひろがります。

「全国には、緑で街づくりを実践している商店街などもあります。緑の力で、街のイメージを作ることも、できると思うのです。何より、緑や木陰のあるところには、人があつまります。その緑や木陰が建物から建物へ、さらに通りの向こうまで繋がっていけば、自然と歩くのがたのしい街になるはずです。そうなれば、街並みも私たちの暮らしも、より豊かになる、そう信じています。」

2015年12月



■PROFILE

株式会社ナインスケッチ

2013年の創業以来、造園から外構など、建物の外回り全般を手がけています。庭づくりのメインコンセプトである「雑木の庭」は、樹々の持つ力を生かし、住環境を建物の外から改善するというもの。2014年に出展した、浜名湖花博・庭園コンテストでは、浜松市長賞を受賞し、注目を集めています。

■ホームページ:http://www.9sketch.com/

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