三ヶ日のみかん

2014.11.19
【第2話】

収穫まで

奥浜名湖を臨む三ヶ日のみかん畑へ。

左手に遠州灘を臨む国道一号線のバイパスを通り、浜松駅から西へと車を走らせます。浜名湖を渡ったところで進路を変え、浜名湖を北上すること約30分、三ヶ日町に到着します。

みかんの収穫は11月から年内まで。秋が深まるのにつれてゆっくりと色づいていきます。

みかん畑は湖の側の平らな土地から始まり、その上へと続く斜面一面に広がっています。畑の間に通っている道を軽トラックでゆったりと登っていくと、奥浜名湖を一望できる斜面に。南東に面したその場所は、空が開けて、初冬の太陽の光が存分に降り注いでいます。

「ここでまずいみかんはできない」と、三ヶ日でみかん栽培をする外山氏。この土地の豊かな恵みを肌で感じているからこその言葉です。こっちの畑でひとつ、あっちの畑でひとつ、枝から実をもぎ取り、手早く二つに割って半分を差し出してくれました。ふわっと、甘酸っぱいみかんの香りが一瞬、あたりに漂います。

来年の木の姿をおもう、想像力。

いくつかの畑でもいだみかんを食べ比べてみると、確かに、味の違いがはっきりとわかります。同じ三ヶ日でも、猪鼻湖(奥浜名湖の西側の入り江)の東と西では陽当たりや昼夜の寒暖差が異なり、当然ながら味もさらに変わるそうです。日当りだけでなく、前の年やその前の年の仕事が、その年のみかんの味の善し悪しや実のつき具合を決めます。

みかん農家は花が咲くところで、その年のみかんの出来がほぼわかるのだとか。勢いがある新しい枝と花がバランスよくつくことで、美味しい実をならせることができるかどうかがわかるそうです。農家は、来年の実のつき具合をイメージして、枝を整えます。何とも想像力のいる仕事です。

ワインのように、ゆっくり寝かせて。

みかんは農家にある倉庫の中でゆっくりと熟成されます。最近はコンクリートなど人工素材の倉庫が一般的ですが、昔は土壁でできた倉庫がみかんの保存に利用されていました。土壁は庫内の空気を低温・高湿の環境を保つのに最適。みかんが腐るのを防いでくれたそうです。

さらに木の箱に入れて箱同士を少し浮かせて保存。木と土の調湿機能を利用して、まるでワインのようにみかんを寝かせたそうです。今でも木の箱を使って保存している農家も。採りたての酸味の強いみかんも爽やかですが、収穫後に少し寝かせることで、角がとれてまろやかな甘さのみかんになります。

三ヶ日で栽培されている「青島みかん」は収穫後に数ヶ月間保存がきくのが最大の特徴です。年内に収穫を終え、翌年の3月くらいまで、少しずつ出荷します。お正月以降に出荷できるみかんは他の地域ではほとんどないそうです。三ヶ日のみかんなら、「こたつにみかん」が、暖かくなる春先までゆっくり楽しめるというわけです。
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