
「お客さまとサービスマンは対等であれ」
T現在はレストラン支配人ということですが、鈴木さんは北の丸に勤務されて何年目くらいですか?
鈴木新卒で平成2年入社ですから、23年目です。たまたま転勤もありませんでしたので、長くなってしまいました(笑)。
Tその頃、北の丸で働くというのは、どうでしたか?
鈴木そうですね。やはり、自分の親よりも年上のお客さまを接客しなければならなかったので、非常に厳しかったです。ご高齢というだけでなく、地位のある方が多くて。それに、お客さまだけでなく、調理の方なども自分よりかなり年上で厳しかったので、入って2、3年は本当に苦しい期間を過ごしました。
T確かに、それは辛そうですね・・・。

鈴木そうです。ただ、そんな中で、私の亡くなった師匠から「お客さまとサービスマンは、対等でなければならない。私たちはお客さまの奴隷ではない」と、よく言われました。お客さまが紳士淑女であれば、もてなす側も紳士淑女であれ、と。その教えが今でも原点です。
Tなるほど。
鈴木そこで、お客さまと同じ目線で仕事や会話をするには、何が必要かということを逆算で考えていたときに、こちらからお客さまに情報を発信できなければならない、と気づきました。そこからでしょうか、この仕事の醍醐味がわかるようになったのは。

「後は任せるよ」のひとことが、信頼のあかし
T実際に、そういった努力が実ってきたと感じるのはどんな時ですか?
鈴木そうですね。ソムリエの仕事をさせてもらっているので、やはり最初の1杯でお客さまの心がつかめた時ですね。1杯のワイン、1本のワインをお出ししただけで、「後は任せるよ」と言われたり、次にいらしたときも「よろしくね」だけで、任せていただけることもあります。
Tそれは、嬉しいですね。
鈴木はい。お客さまとの長いお付き合いの中で、顔と顔とのつながりが増すことによって、もうメニューを見せなくても一言でお任せいただけるようになりました。そういうお客さまを1人でも多く持てる、それがやはりこの仕事の中で、一番の醍醐味ではないのでしょうか。

お客さまとの、心のキャッチボールを楽しむ
鈴木「今日は楽しませてね」と言っていただければ、こちらも「分かりました、今日は楽しいひとときをお過ごしください」とお返しします。それだけの言葉のやり取りで、どれだけ気持ちのキャッチボールができるか、ということが大事です。
これは簡単そうに見えますが、お客さまと我々の間に見えない壁があるのです。それをできる限り取り除いていきながら、心と心の付き合いができる、ということが、とても価値のあることではないかと思っています。
これは簡単そうに見えますが、お客さまと我々の間に見えない壁があるのです。それをできる限り取り除いていきながら、心と心の付き合いができる、ということが、とても価値のあることではないかと思っています。

つづく