遠州ブランドスピリッツ

STORY

チームでつなぐ、伝統の技

2016.01.18
■レポート/有限会社石牧建築 

石牧建築は、代表をつとめる石牧真志(まさし)さんの父・一夫(かずお)さんが立ち上げました。今年で65歳になる一夫さんは、一線はしりぞいたものの、今も現役の職人として、息子さん世代の職人たちをサポートをしています。すでに独立した弟子たちを含め、チームとしての強さが光る、石牧建築。その根底には、一夫さんの仕事への愛情と、周囲へのやさしさがありました。

【第1話】

大工の仕事を愛し、たのしむ人生

あこがれの大工を、一生の仕事に

一夫さんが大工の世界に入ったのは、16歳のころ。大工を志した理由をたずねると、小学生のころの体験が原点とのこと。自宅の近所で大工さんが家を建てるのを見て、その格好良さにひとめぼれし、「これはいい!」と思ったのだとか。

以来、将来は大工になることを心に決め、16歳から小僧として働きはじめました。小僧というのは、弟子よりもさらに下の人たちだそうです。言われたことを何でもやる、御用聞きのような仕事をする人を、大工の世界では、こう呼ぶのだそうです。

一夫さんの話に耳をかたむけるお弟子さんたち。大工をこころざした、あまりにも純粋な動機に、笑い声がおこります。

下積み時代にみつけた、理想の職人像

一夫さんが働いていたところでは、数人の親方がいて、その親方たちから「あれをやっておけ」、「これをやっておけ」という具合に、次から次へと仕事を頼まれました。小僧としての仕事は、一夫さんが23歳になるまで続いたそうなので、ずいぶんと長い下積み時代でした。
でも、その歳月の中で、さまざまな職人と接したことが、その後の職人としての生き方に、大きな影響を与えたそうです。「親方の中には、偉そうだったり、すぐに怒る人もたくさんいた。その一方で、いつも笑顔で穏やかな人もいて。自分は将来なるなら、決して他人に怒らない、にこにことした職人がいいと思ったんだよ。そういう職人のほうが、やっぱりいい仕事をしていたんだよね。」

独立後は、いきなり親方としての仕事が待っていました。小僧のときはやったことのなかった「墨つけ」(材木に墨で印をつけること)の作業をやることになり、これまで見てきたことを頼りに手探りでやってみたところ、できてしまったのだそう。

「墨つけというのは、そのあとの工程を左右する、責任ある仕事。やったことはなかったけれど、繰り返し墨つけされた材木を切ったり、削ったりしてきたから、体が勝手に覚えていたんだよね。」

まさに、「習うより慣れろ」の世界です。

技術と人柄が、職人の力量を決める

一夫さんは、独立してから一線をしりぞくまで、お客さまにはほんとうに恵まれた、と振り返ります。「時代もあったけれど、自分は本当に好きなように仕事をさせてもらった。」こんな一夫さんの言葉に、かつて石牧建築で働いていた門西(もんざい)さんや市川さんが「親方は、みんながファンになってしまう、不思議な魅力があるんですよ。」と口をそろえます。

それは息子の真志さんから見ても同じで、真志さんが何度もお客さまに説明しても、同意してもらえなかったことも、翌日、一夫さんがお客さまと会って話すと、すんなりと了承を得てくるのだそうです。「本当に、どうやって説得したのか、不思議でたまらないんです(笑)。昨日の自分の努力は、なんだったんだろうって。」

そんな弟子たちの話を笑いながら聞いている一夫さん。まわりには、おだやかな空気が流れています。

(上)左から真志さん、いちかわ建築の市川圭さん、門西建築の門西健二さん

つづく

■PROFILE

有限会社石牧建築

遠州・天竜地区でとれる木材を使い、伝統的な「手刻み加工」による家づくりを手がけています。杉やひのきの山林に囲まれた、浜松市天竜区春野町の加工場は、街中の喧噪から離れ、木とじっくり向き合える場。そこから生み出される家は、まさに「遠州生まれ・遠州育ち」です。

■ホームページ:http://www.ishimaki.com/

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