TOWTOWMI SELECTION

STORY

五代目 和菓子職人の挑戦

2014.03.20
■インタビュー/巖邑堂 内田 弘守
【第4話】

「一期一会」の菓子づくり

茶の世界観を表現する茶菓子

Tオリジナルの和菓子を頼まれることは、よくありますか?内田うちはそういう注文がすごく多いと思います。いきなり来店されて、「結婚式で使うのだけど、食べたことのないようなものを作ってほしい」とか。お茶の先生はもちろん、掛け軸と菓子器はこれで、お茶杓はこういう銘だから、お菓子を考えて、という注文もあります。お茶の先生は、店に並んでいる上生菓子ではなく、自分の席でしか食べられないものを希望されます。T「一期一会の味」ということですね。内田そうです。Tイメージや茶道具とかを伝えられて、その情報だけで作れるものですか?内田作れるようにならなければいけませんが、まだ勉強中ですね。でも、それについては本当に良い出会いがありました。僕のお茶の先生が、「静岡県の茶道連盟の会長さんが浜松にいらっしゃるから、紹介してあげるわ」とおっしゃって、その先生を紹介していただきました。もうお亡くなりになりましたが。最初はけちょんけちょんに言われましたが(笑)。Tそうなんですね。内田すごい先生でした。最初は使ってもらえずに、見本をずっと何度も持っていき、庭の掃除までしました。T庭の掃除まで!すごいですね。内田そのうち使ってもらえるようになって、それからはお抱えのようにしていただきました。でも、色の善し悪しとか、すごく厳しいんです。お菓子は作れても、お茶の世界観を作るのは難しい。T確かに・・・、難しそうですね。内田最初は、茶道さえもよく分かっていないので、掛け軸が掛かっていても読めませんでしたし、器は誰々で、という背景も全然分かりません。それなのに、「こういうものだから作りなさい」と言われて、何色がいいのかを聞いても、「何色なのか考えなさい」という感じでした。何十回も作り直しをしましたね。その状態が3、4年続きました。Tもうアートの世界ですね。内田そのおかげで、感性を磨かなければいけないと思いました。ただお菓子を作っているだけでは通用しませんから。T最近でも怒られることはありますか?内田浜松では、最近はうちを選んで指名してくれるようになってきましたから、怒られることは少なくなってきました。でも、京都や東京などのお茶席に一緒に入らせてもらって、お菓子が出されたときに、刺激になることは多いですね。

平安時代のように、歌を返したときの感動を

内田少し前の話ですが、ある方からお茶席でのお菓子を依頼されたことがあって。その方の娘さんは芸術家なのですが、娘さんの名前を聞いて、聞いたことがある、と思いました。で、改めて作品を見てみたんですが、独特な世界観で・・・。Tそうなんですね。内田ええ。その作品の世界を表現するお茶席にするということでした。全然思い浮かばないので、「仮名を付けるとしたら何にしますか」と聞いたら、「『クモの糸』にします」と言われたのです。そんなお菓子は気持ち悪くて作れないと思ったんですが、作らなければいけない。

普通はいろいろ遊び心を入れたりとか、少し華やかにしたりしていますが、このときは何もないほうがいいと思って、全部真っ白のお菓子を作ったんです。白あんは普通、白くならずに黄色になってしまうのですが、それもなるべく白くする努力をして。それで、「どうですか」とお見せしたところ、「これでいいわ」ということでした。T全部白ですか?内田全部白です。そぼろでぱらぱらとしたようなお菓子で、切っても白いんです。けれども、その白をできるだけ美味しくしようと思い、いろいろ工夫しました。気に入ってくれたので良かったです。
T出すまではドキドキしますよね。内田そのままストレートなお菓子を作ると、こちらが大したことないと思われるような気がして。ですから、何かアイデアを考えて出しています。Tその手できたか!という風に。内田平安時代の歌ではありませんが、歌を返すと相手が「わあ!」と感動するような、そういう感じを目指して考えています。

つづく

■PROFILE

巖邑堂

明治初年の創業以来、伝統の技法で昔ながらの和菓子の味を守る、老舗の和菓子店。定番商品の他、季節ごとの和菓子も人気です。一部の商品は通信販売でも購入可能。浜松駅より徒歩5分。



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