飯田線の旅

2015.05.25

長野県との県境がある北遠地区は、一般道を北に向かうと、ほどなく南信州に出られる。とはいえ、カーブの多い山道が続くため爽やかなドライブというには程遠く、車の運転が苦手な人にはおすすめしにくい。

信州に向かうルートはいくつかあるものの、ちょっと気分を変えて、車でなく電車を利用する方法で、初夏の長野に向かってみた。
佐久間町と水窪町には、JRの駅がいくつかあり、豊橋―辰野間を走る飯田線が利用できる。数あるローカル線の中でも、日本有数の路線の長さで知られている飯田線だが、北遠地区からは1時間ほどで長野県の天竜峡駅に到着する。

辰野行きの下り列車は、佐久間町の中部天竜駅を通過すると、天竜峡駅まで駅員がいないので、無人駅での乗降を経験したことがなければ、あえて途中の駅を利用してみるのもおもしろいかもしれない。

実際に乗車してみると、鉄道マニアと呼ばれる人たちもいて、しっかり下調べをしている彼らの話はちょっとしたガイドブックになる。車では行けず飯田線を利用する以外に方法がない「小和田駅」は、特によく知られているようで、短い停車時間ながら撮影する乗客の姿が目立った。
乗客の乗り降りがなければドアの開かない車内は、電車の音だけが強調される静かな空間で、車での生活に慣れてしまった身には、この電車の音や揺れがどこか懐かしいような感覚になる。

川に沿って緑の中を走るため、車窓から見えるのは一面の大自然。渓谷風景を眺めながらぼんやりと思索したり、居眠りしたりという時間を過ごすことになるが、これが思いがけず、慌ただしい日常生活を見直すひとときになったような気がする。

天竜峡駅を過ぎた辺りから風景が一変し、整備された道路や、その両側に点在する飲食店などが見え、人の暮らしを感じさせる。

滞在時間と帰路の電車を考慮して、川路駅で降りることにし、昼食をとった。地元の野菜を使っているという飲食店に入ったところ、バイキング形式で定番の料理に混ざって、菜の花の炒め物、ヨモギと干し柿の天ぷら、糠漬けなど、いかにも長野らしい料理が味わえた。

旅の醍醐味はやはり味覚。最後は味覚で楽しむことで、充実感が倍増するように思う。
北遠地区までのドライブと、田舎のローカル線を組み合わせた日帰り旅行は、数少ない列車に合わせることさえ注意すれば快適に行動範囲を広げられる。道中もリフレッシュできる小旅行として、楽しんでもらえるのではないかと思う。

COLUMNIST

Kimiko Hirade

浜松市天竜区の最北・水窪町出身。健康で安心安全なライフスタイルに注目。山も海もある浜松の自然を生かし、人にも地球にも優しい日常生活の、更なるグレードアップを目指している。

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