土着の道具を語る その2「えべすさん」

2015.08.05

道具をキーにして遠州を見つめる第二弾は、「えべすさん」です。

これは本当にマニアックな道具。
浜名湖名産の海苔を手作業で作っていた江戸〜明治時代に活躍したもの。

浜名湖の海苔養殖については、まずはこちらの記事を参照ください。
??遠州三昧:浜名湖の青のり/春「産地になるまで」

海苔の作り方は、
1.収穫した海苔を細かく刻み、水にとかす。
2.巻き寿司を作るときに使うものと同じような”簀(す)”の上に枠を置き、海苔の入った水を流し込む。
3.簀ごと天日干し

今回ご紹介する「えべすさん」は、流し込んだ海苔が乗った簀を一度に大量に背負って運ぶための道具。海苔作りの中でもかなり縁の下の力持ちな道具です。

図解するとこのような感じさて、「えべすさん」の面白みは、規格統一されているようでされていない手作り感。
みっつ並べてみました。いかがでしょうか。同じようで同じではないのです。名もなき海苔職人が、必要だったからその辺の木材でだいたい同じ感じに作ったのです。一本少なかったり、斜めのつっかい棒が付いている位置がみんな違ったり。再利用しているような切り欠きのある材も見えます。

職人の使う道具って、「これぞプロのこだわり!」というような厳密な道具と、力が抜けている道具があって、それってとっても面白い。

こちらは海苔の形を決める「枠」。厳密です。うっかりちょっと小さい枠で海苔を作ったら詐欺ですからね。樫など固い木できっちり作ってあります。一方、えべすさんは、運べればOK。
力を入れる緩急が面白い。

ところで浜名湖の海苔養殖の背景はというと、約200年前の江戸時代、当時は江戸であった大森(現在、東京都大田区)の海苔職人が始めたもの。商品は名古屋経由で関西方面に出荷されました(当時は江戸・大森と広島でしか海苔を作っていなかった)。
江戸の技術を学びながら関西に商品を出荷することのできた・・・というのはまさに地の利。まったく江戸の頃も、濱松は「便利な田舎」だったわけです!

海苔養殖はたいそう繁盛し定着、今に至ります。
なお、海苔の製法は自動化・機械化されても工程は同じ。今度、板海苔を眺めてみてください。縦や横に入っているスジは、今も変わらず「簀」の跡なんです。現代の製造工程はこちらをご覧ください。
??遠州三昧:浜名湖の青のり/春「収穫まで」

写真:浜松市博物館提供・掲載承諾済

COLUMNIST

Saiko Hakamata

大学卒業後、東京に本社を置く企業に6年間在籍、計10年を東京で過ごす。30代に入り、故郷・浜松にUターン。高校卒業以来の遠州ライフを楽しんでいる。

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