土着の道具を語る その1「ばい」

2015.05.30
前回まで、土地や言い伝えなどを題材に、歴史にからめた遠江の面白さを紹介しました。

今回からは「生業の道具」「生活の道具」を見つめることで遠江を語りたいと思います。

「生業(なりわい)」である農業や漁業・林業などに用いる道具は、毎日毎日繰り返し使われる過程で少しずつ工夫がなされ、何十年何百年の蓄積の結果、各土地に似合う形に分化しました。また、無駄のない美しいフォルムに洗練されたものも少なくありません。

100年前頃の「生業の道具」「生活の道具」は、その土地から生まれる生産物(食物など)と密接に関わりながら用い、また、作る過程では使い手と作り手が密接だった結果の分化・洗練だと思います。

そんな道具たちに注目して、ものがたりをしたいと思います。


さて、第一弾はこちら! 
「ばい」という名で呼ばれる道具。
天竜の山あいで使われていました。
大きさは、片手に持って使うのにちょうどいいくらいです。
一体何に使うのでしょう!
写真:浜松市博物館提供・掲載承諾済
いちおう道具の成り立ちを見てみると・・・
いい感じに二股分かれている枝の部分を、切り取った ・・・以上、完成!

かなり単純な道具ですね。


さて正解は、「脱穀の道具」です。

「脱穀(だっこく)」って実際したことある人は少ないと思いますが、大豆やソバなどの殻類の殻(から)を取り除く作業です。実がついたままちょっと乾燥させると殻が浮いてくるので、ばんばん叩けば中の豆が出てきます。

その、ばんばん叩くための道具。

私が子供の頃、ばあちゃんは庭先でゴザを敷いて大豆をばんばん叩いてました。(うちは平地で扱う農作物の種類が異なるのか「ばい」ではない道具でしたが)

叩くだけの単純な作業を助けてくれるこの道具、人の歴史のどこかの段階で、「豆を出すのに手で叩くのも痛いし、道具があったら便利だろうなあ」と思った誰かがいて、最初はきっと1本の棒で叩いていたけれど、

また誰かが「ねえちょっと! この二股の枝だと、効率よくない? 倍じゃない?」と気付いたんでしょうね。
(だから「ばい」って呼ぶかは知りません・・・笑)

「最初の誰か」のクリエイティビティに感動するわけです。必要を感じ取る力、具体的な機能を抽出する力、身の回りのもので実現する力。

単なる木の枝に背景を見ると、途端に面白くなってくる。

そんなお話を紹介していきたいと思います。


※ご紹介した道具の詳細は、浜松市博物館・館蔵資料検索システム「ある蔵」で検索することができます。
ある蔵 http://jmapps.ne.jp/hamahaku/

COLUMNIST

Saiko Hakamata

大学卒業後、東京に本社を置く企業に6年間在籍、計10年を東京で過ごす。30代に入り、故郷・浜松にUターン。高校卒業以来の遠州ライフを楽しんでいる。

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