地名と地元

2015.02.02
私は、地元が好きです。
なぜ好きなのだろうと改めて考えてみると・・・
「この地方のことをたくさん知っているから」というのが理由の1つとして思い当たりました。この地域で生まれて、幼小中高と成長する年月の中でいろいろなことを知り、知っている量に比例して湧いてくる愛情というのはあると思います。

そして逆に、知っているつもりになって、気付かなくなることも。今回は、改めて地元を考えてみての発見をお伝えします。

私の出身地を細かく言うと、浜松市の東区にある「長上(ながかみ)地区」という地域です。「長上」は古くからの地名で、今では公民館の名前(今では公民館も「恊働センター」と呼ぶそうですが)くらいにしか残っていません。
正直、「古くからの地名」とは父から聞いた「昭和の市町村合併をする前まで、長上村だった」という話で満足していたのですが、今回の記事を書くにあたり調べてみたところ、想像はるかに超えた古さであることを発見!!

「飛鳥時代、大化の改新の律令制度により遠江国が定められた。また、和銅2年(709年)に『長田郡』が『長上』と『長下』に分割された」

え・・・! 大化の改新!? 709年!?
まさか。
まさかでした。
さかのぼること1300年。

古都・京都をすごいすごいと思っていたけれど、長上村もまた、1300年の歴史を有しておりました。

そうなると、2009年に長上誕生1300年祭をしなかったことが悔やまれます。「公民館祭り」で1コーナー作れたのに・・・!


さらに、長上周辺の地名について。

飛鳥時代はもちろん江戸になっても今ほどの治水は行われておらず(明治時代に金原明善が治山・治水を成し遂げた)、遠州地方の真ん中にある「天竜川」は、とっても自由に流れていました。

大雨で氾濫し、川の流れは右へ左へ。現在の浜松市にある三方原(みかたばら)と磐田市にある磐田原の間で、右へ左へ西へ東へ自由自在。農民はたまったものではなかったでしょう。
長上の中や周辺にある町名には、実は「島」のつく地名が多いのです。たとえば、「上島(かみじま)」「細島(ほそじま)」「原島(ばらじま)」。

これは想像の範囲なのですが、「島」の名の付く辺りは、天竜川が流れを変えたときにも川底に沈まない土地だったのではないでしょうか。「島」というくらいの狭めの範囲ながらも。上島は、確かに「島」という地名の中では北の方にあります。細島は、まあ細長かったんでしょう。原島は、「原」というくらいですから比較的広かったんじゃないかしら。

「長田」であった「長上」「長下」は、南北に長く田んぼを作れるくらい土地が広がっていたのでは。

その他の地名も、「小池(こいけ)」は小さな池ができるくらいには浸かり、「中田(なかだ)」「上石田(かみいしだ)」「下石田(しもいしだ)」あたりは、田んぼが維持できたのでしょう。「石田」は、土砂は被ったのかもしれません。「市野(いちの)」も、市ができるくらいの野ですから、かなりの広い土地が沈まなかったのでしょう。

ちなみに、市野には「市野さん」という人がいて、江戸時代初期に代官をされていたそうです(平安時代には、すでに「市野荘」という荘園があった)。その「市野家」の菩提寺は宗安寺(そうあんじ)というのですが、我が家も檀家です。

宗安寺の中に、一段高くて石の塔や植木のある立派なお墓があると思っていたら、「市野家代々の墓だ」と母が教えてくれました。そして聞いてもいないのに市野家の跡継ぎの近況まで教えてくれました。嗚呼、ご近所。

ちなみに宗安寺も、そこそこ由緒があるとは家族の言葉尻から知っていましたが、調べてみれば「室町時代末期創建」。
これまたまさか。600年超の歴史が目の前に。なんということだ。立派な由緒が。

いやでも私にとっては、この間代替わりした若住職が、寺中の木を伐ってしまってけしからんと家族で怒っているのがリアル(笑)。
嗚呼、それもご近所の日常。

■浜松市東区案内「寺社仏閣:宗安寺」
浜松市の案内サイトへ


昨今の天災で、地名や、神社のいわれなどが注目される機会がありました。またエンタメとして、タモリさんが街を歩く某番組で「渋谷は、本当に谷だ」など、地名や地形を味わう様子が紹介されていました。

ある土地で生まれ育てば、自然とたくさんの情報が入るものですが、「知ってるつもり」になっていることもたくさんある。また、全然知らない土地について知ることも楽しい。

「長上」という名は1300年の間、この土地に住む人・この土地を通り過ぎる人・この土地に用事のあった人たちがずーーっと口にして、この土地を認識してきたかと思うと、えも言われぬ感動と、なぜか「ああ私は一人じゃなかった」という安堵を覚えました。

1300年間という時間は、どうやっても1300年かけないと積み重ならないという当たり前のことをあらためて噛み締めます。

おそらく、遠州が特別歴史深い場所ということではなく、日本中各地で1000年を超える歴史が日常に紛れているのでしょう。
ああ面白い。

「遠江国風土記伝」という本があり借りられるそうなので、さっそく図書館で予約しました。楽しみです。

COLUMNIST

Saiko Hakamata

大学卒業後、東京に本社を置く企業に6年間在籍、計10年を東京で過ごす。30代に入り、故郷・浜松にUターン。高校卒業以来の遠州ライフを楽しんでいる。

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