北遠のグルメ 1

2014.12.23
北遠地区に限らず、山間の町というのは何かのついでに通りかかるということは少なく、目的があって訪問することがほとんどだと思う。そして訪問先での飲食は、おそらく郷土料理や名物料理を味わうことが多いのではないだろうか。

しかし実際、地元では名物料理よりも人気のグルメはいろいろある。今回は、北遠地区で普段からお馴染みとなっている豆富とピザを味わってきた。
天竜区二俣町。“豆腐”でなくあえて“豆富”と名付けている「ぎふや」のお豆富をいただいた。一般的に豆腐を製造していく過程ではおからが出来上がるが、この豆富はそのおからが出ないことで知られている。タンパク質の栄養価が高いと言われるおからがすべて含まれる豆富は、原材料の大豆をまるごと摂取できることになる。

運ばれてきたのは、ごまと抹茶とおぼろの3種盛り合わせで、ゆず塩が添えられていた。お箸では崩れるくらいの柔らかさだけれども掬った後が残るくらいの弾力がある。滑らかな食感ながら濃度が高く、ゆず塩を付けずに大豆の甘みでいただくのも良いほど豆の味がした。
熊地区に向かう途中、横山橋を渡って民家がまばらになる辺りに、週末のみ営業のカフェ「ゆとり侶」がある。見落としそうな小さな看板に従って川沿いを行くと、古民家を改装した店舗が見えてくる。中では薪ストーブで暖を取り、窓からは木々の緑が見えるため、さながら山小屋のような趣がある。

土地柄、手作りピザというだけでも珍しいが、石窯で焼くとあってさらに興味が増す。見た目の生地の薄さからパリッとしたピザを予想していたが、実際はかなりモチモチしていてしっかりと歯ごたえがあった。自然と噛む回数が増え、ピザ1枚で量的にも満足できた。
手作り豆富も石窯焼きピザも、競合店が少ない山間部では特徴的だが、舌の肥えた都市部からの訪問者にはどう映るだろうか。食の魅力というのは料理そのものだけでなく空間も含めたところにあって、どこでどういただくかも大きく影響すると思う。

冬の観光客が少ない北遠地区は、これからしばらくひっそりと静かな期間になる。行楽シーズンの賑わいの中で名物料理をいただくのも一興だが、落ち着いた日常の中で地元に根付いたグルメを味わってみると、時間の流れ方や居合わせたお客たちの会話などから、その土地の本当の姿が見えてくる。行楽シーズンだけ足を運ぶ訪問者にも、北遠のちょっと違う一面が見てもらえるのではないかと思う。

COLUMNIST

Kimiko Hirade

浜松市天竜区の最北・水窪町出身。健康で安心安全なライフスタイルに注目。山も海もある浜松の自然を生かし、人にも地球にも優しい日常生活の、更なるグレードアップを目指している。

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