おもてなしのカフェ

2015.02.27
昨年の流行語大賞になった“おもてなし”。訪問先で丁寧に淹れてくれたコーヒーなどをいただくと、その1杯で温かな気持ちになれるが、浜松市天竜区にある日本茶カフェで煎茶をいただいた時、この“おもてなし”という言葉をふと思った。
笠井街道から小路に入り込んだ住宅地の一角に、日本茶の専門店「お茶の間 のおと」がある。古民家を改造した店舗は、素朴な看板とのれんがなければ、個人宅と間違えそうな外観で、玄関を上がると陽射しの差し込む縁側が続くという、少し時代が戻ったような空間が広がっている。

メニューには全国の様々な銘茶が並び、茶葉に合った温度のお湯と急須が一緒に運ばれてくる。
サービスを提供するのが飲食店であり、お客はいくらかの料金を支払ってそのサービスを受け取っている。美味しい煎茶も、設えた空間も、言ってみれば料金と引換のサービスのはずだが、思い浮かべたのは“おもてなし”だった。
日本に茶道という文化があること、煎茶の美味しさ、懐かしさの漂う空間など、思いつく理由はいくつかあるが、一番の魅力は店側の接客にあったと思う。

「のおと」ではお客の出入りがあると、玄関まで出向き、必ず膝をついて一言二言と声をかけていた。その所作は丁寧すぎることなく何とも自然で、礼儀やマナーに固執するのではなく体に馴染んでいる動作のように見て取れた。

また聞こえてくる会話も店側の視点ではなく、感想を聞いたり次の来店を促したりするような言葉はなかった。店員が帰り際にお客と話す場面はよく見かけるが、付かず離れずの距離感で、営業的でない姿勢はとても印象的だった。

希少価値の高いものをいただいたり、自宅にない空間で一時過ごしたりするのも、お客の立場としては楽しい。しかし特別な何かがなくても伝わる感情があり、それを“おもてなし”として受け取っているような気がする。そんなさりげない“おもてなし”を受け取れる場が、北遠地区に存在していることがうれしい。

COLUMNIST

Kimiko Hirade

浜松市天竜区の最北・水窪町出身。健康で安心安全なライフスタイルに注目。山も海もある浜松の自然を生かし、人にも地球にも優しい日常生活の、更なるグレードアップを目指している。

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